歌と歌手にまつわる話

(82) ドリス・フォン カップルホフ  Day By Day

Doris Day(1924- )

ドリス・デイはドイツからの移民の家庭に生まれました。本名はDoris Mary Ann Von Kapplehoffという厳めしい名前です。

Kapplehoffという姓は芸名として使いづらいので、レパートリーに入っていた"Day By Day"からとって、Doris Dayとつけられたという話です。随分安易な決め方ですね。

ドリス自身はこの名前を気に入っていなかったといいます。われわれ日本人には分かりませんが、ストリッパーの名前のように聞こえるらしいのです。何でそんな名前にしたのでしょう。彼女の振る舞いはそれとは正反対の清純で健全なイメージを貫いたのは「精一杯の皮肉」だったのかとも言われています。

"Day By Day"はそんなわけで、彼女の芸名に通ずる関係の深い歌なのです。Jimmy Scottのようにスローで唄います。

ドリスの夢はダンサーでした。しかし、14歳のときの自動車事故で大怪我をして夢は断たれました。そして、16歳でRes Brown楽団で歌手としてのキャリアが始まりました。

40年代、50年代には立て続けに映画に出演します。ヒッチコックの「知りすぎていた男(1956)」はサスペンスものでした。主題歌のケ・セラ・セラはアカデミー主題歌賞でオスカーを獲得し、何ヶ月もヒットチャートのNo.1でした。ドリスは「こんな子供じみた歌は唄いたくない」と唄うのを拒んだのだそうですが、パラマウント映画からの圧力に負けて唄うことになりました。それが彼女の代表曲になったのです。皮肉なもんです。どうも、ドリスには皮肉がついて回るようです。

その3年前に「カラミティ・ジェーン(1953)」があります。実名はMartha Jane Canary (1848-1903) といい、ミズーリ生まれの実在の女性です。着ている服も喋る言葉も男と一緒で、腰には拳銃、酒は飲むは、噛みタバコをくちゃくちゃやるは、だったということです。"Calamity Jane"とは、インデアンとの戦闘中に傷つき、ジェーンに命を助けられたCaptain Eganから頂戴したニックネームです。

「カラミティ・ジェーン」はドリス自身がこの役をやりたかったと言います。ボブ・ホープの「腰抜け二丁拳銃」ではこの役をジェーン・ラッセルが演じています。見た目には、ジェーン・ラッセルの方がお似合いのように思いますが、何かドリスの思惑があったに違いありません。自らこの役を買って出たのだそうです。

その理由については、ドリス・デイという女優の虚像と実像の部分に立ち入らないと分からないものがあるような気がしませんか。


Calamity Jane

2006年秋は、スリー・グレイセスが9回目の定期コンサートを迎えます。それに向けてプロデューサーの忠Gは準備を進めています。半月ほど前にCalamity Janeの歌の譜面を手に入れたい」とメールが来ました。忠Gは何か困った事があると、お助けマンにメールを書いてきます。

"Secret Love"がスタンダードのソングブックに出ているくらいです。"Secret Love"はカラミティ・ジェーンで、1953年のアカデミー主題歌賞を受けた歌ですから特別なのでしょう。その他の歌は通常のソングブックには出ていません。昔、"The Black Hill of Dakota"は口ずさんだ事がありますから、どこかで見ているはずです。それとも、耳から入っていただけかもしれません。

それが、イギリスで全曲を収めた楽譜が出版されていました。運よく見つけたのですが、この譜面は直ちに編曲家のところに届けられました。コンサートではカラミティ・ジェーンから3曲ほど唄うことになると思います。何を唄うかはお楽しみに。

いやぁ、探してみるもんですね。

昔の人は言いました「犬も歩けば棒に当たる!」

現在は、Doris Day Annimal Foundationの総裁として、動物愛護の活動をフルタイムで精力的に行っています。2004年にはブッシュ大統領から"Presidential Medal of Freedom"を受けましたが、ホワイトハウスでの授賞式には多忙を理由に出席していません。実際のところは飛行機に乗るのが怖いのだそうです。そんなら馬に乗って行けばいいのに。

ブリジッド・バルドーは過激な動物愛護で有名です。度を越すと反発も強くなります。2006.7


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