ジャズと歴史にまつわる話

ラグタイム王 Scott Joplin


Scott Joplin(1868-1917)

ラグタイム・ピアノという奏法があります。ピアノを持つことができなかった黒人たちがピアノを手にして弾けるようになり、自分たちのワークソング、霊歌などをつぎつぎとピアノに移していきました。ラグタイムもジャズの素地となる音楽です。

1893年、フレッド・ストーンの"Ma Ragtime Baby"という曲ではじめてラグタイムという語が使われました。ラグタイムの"Rag"とは不揃いとかデコボコという意味ですが、音を小節の中に行儀良くはめ込まず、わざわざ半端にして演奏しています。これがジャズに合流しあの強烈なシンコペーションを生み出すもととなっています。

スコット・ジョプリンは1899年に"Maple Leaf Rag"を出版し有名になり、ラグタイム王とよばれます。この楽譜の出版に関しては面白い話があります。ジョプリンはいくつかの曲を作ってある音楽出版社に持っていったところ、別の曲"Original Rags"を買ってくれました。しかし"Maple Leaf Rag"がはじかれてしまったのです。"Maple Leaf Rag"を聴いたJohn Starkという百姓でアイスクリーム売りでピアノ・ペダル直しの男が世話をして出版してくれました。たった1年のうちに100万部も売れてしまい、2人は大儲けをし大変に仲良くなりました。

そんなわけで、ジョン・スタークはラグタイムの譜面の出版に長年にわたって関わるようになりました

Ragtimeの発祥を楽譜が出版された時点を以ってすると、1895年Ben Hurneyが自作の歌You've Been a Good Old WagonをLouisvilleで出した時です。Hurneyはその後ラグタイムをニューヨークにもたらし、流行らせました。
最初の器楽演奏によるラグタイムはWilliam KrellのMississippi Ragで1897年のことす。


Jelly Roll Morton

(1885-1941) 

モートンは"Tiger Rag"を作曲して有名になりました。モートンはじつにトロンボーン、ドラムス、ヴァイオリン、ハーモニカ、ギターをマスターし、最後にピアノに落ち着いたというのですからマルチ・ミュージシャンの元祖のような人です。

さらに彼はジャズのコード記号を考案しました。ジャズ・ミュージシャンはみんなこれのご厄介になっているのです。Gなんてご存知でしょう。 このことについては、ジャズと雑学のところで詳しく書いてあります。

それに彼は1902年頃にブルースとラグタイムを結合した演奏を行っているのですが、後になって彼自身が「この時がジャズの始まりだった」と言っています。この発言は大変な反発をまねき、モートンの評判に傷つけたと言われますが、モートンの言うことは確かだと評する人もいます。 モートンを 「ほら吹きモートン」とか「大風呂敷のモートン」などと呼ぶ人もいました。

1910年代のODJBのNick LaRoccaの息子Jimmy LaRoccaがディキシーの伝統を守りつつODJBをNew Orleansで続けております。そのJimmyからのメールによりますと、"Tiger Rag"の作曲はモートンではなく、1912年にNick LaRoccaが作曲したものだということです。

やはり、「ほら吹きモートン」の話は事実だったのです。
copyrightの所有者はNick LaRoccaでした。     2002.12.20

ちなみに、http://www.geocities.com/infrogmation/Tiger.htmlでは
According to Nick LaRocca, it was written by Nick LaRocca.
According to Jelly Roll Morton, it was written by Jelly Roll Morton.
According to Punch Miller, he and Jack Carey wrote it's best known strain, the "hold that tiger" part.

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