ジャズと雑学

(13) クルーニング唱法


名古屋方面で活躍している弾き語りの菅沼直という人柄のよい歌手がおります。彼が東京に出てきて偶然に出会ったのですが、東京に進出したいといっています。

その彼から「クルーナー唱法」って何です?という質問がE-Mailで入りました。はじめ、クルーナーというのはドイツ人の名前かと思ったのですが、そんな名前を見たことがありません。名古屋芸術大学で教えている従兄弟に電話をして聞いてみましたが、知らないといいます。でも、すぐに調べてくれました。

「クルーニング唱法」っていうのが音楽事典にあるというのです。「綴りは?」と聞くと"crooning"だといいます。これで分かりました。"croon"というのはささやくとか低い声でぶつぶつとしゃべるという意味です。"Birth Of The Blues"の歌詞の中にも出てくる言葉ですからよく知っていました。

音楽事典には1920年代からポピュラー音楽で始まった唱法とあります。つまり、マイクロホンが出来て、ささやくような声で唄っても聞こえるようになったのです。拡声器というものを歌で使うようになったのです。先駆者として"Whispering"ことJack Smithや"Little"ことJack Littleらがおりますが、ビング・クロスビーも"crooner"と呼ばれたのです。この話を仲良しのジャズ歌手、峰純子に話したら、

「そう、クルーナーはどこにも声を当てないように発声するの」

だと言いました。これは音楽的に極めて的確な表現だと思いました。事典にも書いてありません。彼女はさすがにベテラン歌手なのです。技術と知識の両方を持ちあわせたジャズ歌手なのです。



Junko Mine


峰さんは静かにソフトに唄う歌手です。それでいてボリューム感があるのです。ある年齢に達した女性にしかない落ち着いた魅力をもった歌手です。素人には難しいブレスが安定していて、聴いていてとても自然です。

その彼女にも欠点があります。たまたま、われわれの仲間だけしかお店にいない時間帯(まだ早い時間ということ)に、ソファにどっかりと座り込んで独り言をいいます。「まだ、お客さん来ないから・・・」と。客と話しながらですよ。そういうところがいいんですよ、彼女は。


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