| 杉 作 の う た 更新 2006/11/26 |
私のことを大事にしてくれた大学時代の混声合唱団の2年後輩が、数年前に若くして「くも膜下出血」で倒れた。驚きと悲しみで一杯だった。彼はほとんど死んでいたと言ってよい。それが、恋女房の懸命の看護のおかげで死の淵から這い上がり、永い間のリハビリテーションにより、外出も出来るようになった。自分で物を書くと「杉作」と名乗っている。杉作は2年前から合唱団のOB/OGの新年会に女房と友人らに連れられて出てくるようになった。 今年も杉作は新年会に出てきた。今年は車椅子ではなく、杖を突いて車からは自力でゆっくりゆっくり歩いてきた。 彼は「生きているのが辛い」と私に内緒話でささやいた。 「・・・」 詰まってしまった。実際、自分のしたいことが出来ず、歯がゆいことばかりなのだろう。健康な人間でさえ、自分の人生を生きていくのは楽なことではない。 この一言が重いと、何人かの人が拘っている。「いっそ、死んでしまったほうが…」と言うことなのかと。俺に言わせると、そうではない。脳みその完璧ともいえる回復と身体の不自由さのギャップが余りにも大きいのだと思う。だから杉作は、それほどに「辛く」感じるのだ。逆だったら、うちのお袋のように「天下泰平」というものだ。(後日挿入) 杉作はポケットから8ページを一冊に綴じたものを出して「これを読んでくれるか」と言った。読んだら、感想を言ってくれと言う。
その1ページ、1ページには俳句のような、和歌のような、「うた?」が書かれていた。 「感想なんて、辛くて悲しくて言えねえよ」 半分はよいのだが、残りの半分は冷静に読むことが出来ない。杉作の気持ちがダイレクトに届いてくるからだ。強いて言えば、私の感想とはこのホームページそのものである。 元はと言えば、リハビリのためのお習字なのだそうだ。筆書きしたものを1枚の紙に数句を切り貼りして、それを更にコピーして持ってきたのである。人に読んでもらいたかったのである。自分の気持の深層を伝えたかったに違いない。 「帰りに俺がもらっていくぞ」 嬉しそうな顔をして、コックリとうなづいた。 |
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杉作は学生時代からジャック・ティーガーデンに憧れて、自分でもトロンボーンを吹いていた。 「トロンボーンは吹いているのか?」 「トロンボーンが欲しい」 昔のトロンボーンは手許にはないらしい。トロンボーンを吹いてみたいはずである。吹かせてやりたい。楽器をいじくることは人間にいい作用をもたらす。 ジャック・ティーガーデンが歌ったビクター・ヤングの名曲”A Hundred Years From Today”(1933)という歌がある。大抵の人は知らない。それが、杉作と私は、この歌が大好きでしようがない。 私が大事にしていた直筆サイン入りのJack T.のAutograph、今は杉作が持っている。あいつが持っているのが一番似合っている。 |
![]() Jack Teagarden(1905-1964) |
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杉作のことを知らない方でも、これを読んで何も感じない者は居ない筈だ。解説は抜き。彼の頭の中は、俺達以上にものを敏感に感じ、完全に元通りだ。彼一流の皮肉も風刺もピリリと効いている。 笑いと悲しみが同居していやがる! 第2弾と第3弾など新ページへのリンクが下のほうにあります。 |
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このハガキは2004年の冬に来たものである。 これも何か感じさせてくれる。 窓の外は「白一色」 |
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"A Hundred Years From Today"を今度唄って聞かせてください、というメールが来ました。「大抵の人は知らない」と豪語しましたが、本当にそうなのです。杉作だけは知っていたのです。倒れる少し前に、この歌をめぐって電話で話したことをよく覚えています。 じつは、Maxine Sullivan(写真 1911-1987)が、30年代から50年代に唄って有名になった歌で、Jack Teagardenの他にも、Joe Williamsが唄っています。私の師匠と言ってもよいDolly Bakerは1922年生まれのおばあちゃんですが、日本にいる頃、この歌を私にと言ってよく唄ってくれました。私にとってはドリー仕込みの1曲です。 1コーラスだけ唄ってみました。杉作の好きな歌です。聴いてください。 ⇒♪♪ A Hundred Years From Today Dollyにもらった原譜面 |
